7章 おわりに



最終回は、意思決定を取り上げてみたいと思います。

確率という数字が目の前に来たときに判断の助けになるモデルですね。


リスク計算やコストと効果の対比など、意思決定の材料はいろいろあると思いますが、

ここでは、利得計算、ゲーム理論を取り上げたいと思います。


ゲーム理論と言うのは、敵対もしくはライバルなどのプレイヤーが他にいる場合に、

自分にとって損なこと得なこと、相手にとって得なこと損なことを計算して、

最悪な着地点、最良な着地点、妥当な着地点を見つけ出す計算です。


囚人のジレンマという例でも有名な理論ですね。


今回はサッカーのPK戦を例に挙げてみたいと思います。

例に挙げるというより、あるゲーム理論の本からの借用なのですが、

非常に簡単な計算式で分り易いです。


フォン・ノイマンの定理、ミニマックスの定理と同じです。


数字の入ったマスの中を見てください。

左下側が、PKの成功率です。

右上側は(1-成功率)で失敗率です。キーパーから見れば成功率ですね。


キーパー

キッカー

左に跳ぶ

右に跳ぶ

左に蹴る

        42

58

         5

95

右に蹴る

         7

93

        30

70



image001.png

Y軸はキッカーの成功率です。

X軸は、0ならキッカーが右を選び、1なら左を選ぶことを示しています。

括弧の中は、(キッカー、キーパー)で、(右、左)なら表のキッカー右・キーパー左の成功率93%を意味しています。

赤いラインはキーパーが左を選んだ時の、キッカーの成功率を示していて、青いラインは右を選んだ時の成功率を示しています。


このグラフは、キーパーが跳んだ方向に蹴った時のグラフです。

成功する場合の最小の確率ラインを示しています。


この赤青2つのラインの下側が、成功の最小ラインですね。

黄色いラインはそれを強調しているだけですが、この山の頂点、つまり2つのラインの交点が最小の最大ポイントとなります。


赤は(0,93)(1,58)を通る直線なので、y=1x(58-93)+93で=-35x+93、青は(0,70)(1,95)で=1x(95-70)+70=25x+70の直線です。

この交点は25x+70=-35x+93、25x+35x=93-70、60x=23、x=0.383333..となり、25x0.3833+70で、y=79.5825が求まります。

つまりここが最小を最大化する均衡点になります。


今度は最大成功が最小となるポイントです。

軸はY,Xとも同じですが、キーパーが飛ぶ方向と逆に蹴っています。


image002.png


青は(0,95)(1,58)=-37x+95、赤は(0,70)(1,93)=23x+70なので、交点(0.4176,79.6)が求まります。


最小の最大は、キーパーが飛ぶほうに蹴っても成功させる、つまりキッカーにとって最低限の事態を最大にさせるポイントです。

最大の最小は、キッカーと違う方向に飛んでも成功する最低ライン、キーパーにとってリスクを最小にさせるポイントです。

このケースでは、ゴールの外に蹴ってしまうなどでの失敗と成功のギリギリのラインの一番下が最小ポイントになります。


2つの点は、大体一致します。

これはゲーム理論でいうところの均衡点になります。


これはある本のミックス戦略という章からの引用で、

真ん中に蹴るという選択肢はありません、どっちに蹴ればいいの?という答えも書いていません。


あえて解釈するなら、少し右より(0.5以下)に成功率80%弱の均衡点があります。

キッカーからすればこれ以下の選択は出来ませんので、迷ったら右側に蹴るべきでしょう。


このような例は、まじめな本を読むとフォンノイマン=モルゲンシテルン解やミニマックスの定理などで、

説明されていると思いますが、これはビックリするぐらい簡潔です。

計算を考える上では、非常に判り易い例だと思ったので、これを紹介させて頂きました。


ゲーム理論そのものの例としては囚人のジレンマの方がピンとくると思います。


あまり詳しくは説明しませんが、共犯者AとBがそれぞれ別件で捕まります。

肝心の事件については証拠がなく2人とも黙っていれば別件だけの短い刑期で済みます。

「相棒は自供してるぜ、お前も吐ちまいな。喋れば減刑にはなるぞ。」と迫られます。

相手だけが喋ってしまえば、自分は肝心の事件の方でも罰せら減刑にはなりません。


お互いが黙っていれば利得は最高になるのですが、自分が黙っていて相手が喋った場合は、最低の利得計算になります。

結局はお互いに喋って利得は均衡点に達する、という話です。


相手についてよく知らない1回だけのゲームなどでは、そのまま当てはまらないところもあると思いますが、生態系の中の生存競争や投機のマネーゲームのように繰り返されるゲームでは、多くの場合で均衡点に達します。


ゲーム理論はナッシュ均衡以降、現実問題の解法として実用され日進月歩で進化し活躍の場を拡げています。

ベイズや確率論も同じですね。



さて、確率特集はこれでお終いです。

いろいろ脱線しながらきましたが、如何でしたでしょうか。


このコラムに取り掛かった当初は、サイコロを3つ振って出た目の和は、分散とは、集合とは、などのように教科書通りの順番で解説してたのですが、

アップする前に読み返して、どう見てもまったく面白くなさそうでしたので、始めから構成し直しました。

計算そのものより、計算の考え方が分るようにしたつもりですが、どうでしょう。


脱線の方も、放っておいても脱線してしまうのですが、

あまり理詰め感じにならないように意図した部分も無きにしも非ずです。


実は「ほっとく」と書いて調べて直しました。

「ほっとく」でも「ほうっておく」でもどちらでも間違っていないようですが、語源が同じなんでしょうかね。



企業のHPに載せるコラムにしては、随分砕けた感じになってしまった気もしています。


学術・技術として読むには低レベルでコラムとして読むにはつまらない中途半端な感じになっているかも知れませんが、

確率に興味を持った方の適当な読み物になれば幸いで御座います。


筆者自身もマジメに情報発信して下さっている方々のコンテンツに助けられています。

ネットに限らず、また情報だけに限りませんが、あらゆる場面で老若男女の良き先人たちの功績の上に立っているのだと、実感しています。


あまり大げさに話を拡げてもなんですが、そうした良き先人たちに感謝の意を込めつつ、

読んで下さった方々の何かの役に立つ事を願って終わらせて頂きます。


2013年 春


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